ラモーのささやかな祝福
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思春期には、ドラマティックな未来を期待していたけれど、たいていの人にとって、一生はオペラみたいに喜劇的でもなく悲劇的でもない。
そんな心持ちのためか、ここ数年、ショパンのバラードやら、リストのソナタやら、ロマン派の大曲にどうも気持ちがシンクロしない。
ドラマティックではなくても、人それぞれ、一生はささやかな祝福のうちにある。いや、あってほしい。
ラモーやクープランの寒梅のような小品の中に、私は「世俗の中のささやかな祝福」を垣間見る。
さて、先週日曜、アマチュアコンクールの常連の方と数人で、アマチュアピアニストとしてご活躍の中村香織さんのご自宅におじゃました。
その際、ドーバー社(ニューヨーク)のラモーの作品集の楽譜をいただいた。チェンバロの譜面に近い、アーティキュレーション、デュナーミクが書き込まれていない原典版だ。
自宅に帰ってパラパラとめくると、大好きな「ため息 Les Soupirs」(クラヴサン曲集収録)の譜面が入っていた。ラモーのこの曲とF.クープランの「双子」(クラヴサン第12組曲)は、今、心が一番シンクロする曲だ。
ちょっと気が早いけれど、年末の発表会、ラモーの「ため息 Les Soupirs」を弾こうと思う。
下は、中村香織さんの演奏による「ため息 Les Soupirs」。