ベルナール・フォクルール オルガンリサイタルへ
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年始に中村紘子さんのニューイヤーコンサートに出かけた際、このコンサートを知った。ミューズ所沢の大ホール「アークホール」は素敵なデザインのパイプオルガンが設置してあるが、その響きを一度も耳にしたことがなかった。せっかくなので、ひと月ほど前、息子を誘ってみたら「ぜひ行きたい」と。ベルナール・フォクルール氏のことはよく知らなかったが、チケットを二枚買った。
プログラムに掲載されたプロフィールによると、ベルナール・フォクルール氏は、1953年ベルギー生まれ。1970年代半ばからオルガニストとして活動を開始。ルネサンスから現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、現代作品の初演も数多く行う。1992~2007年、ブリュッセルの王立モネ劇場の総監督を務め、2007年からエクス=アン=プロヴァンス国際音楽祭の監督も務める。作曲家としても才能を発揮、云々。
この日の演奏曲目は以下の通り。
ブクステフーデ
トッカータ ヘ長調 Bux WV156
「いざ来たれ、異邦人の救い主よ」 Bux WV211
フォクルール
トッカータ(2001)
ブルーナ
聖母マリアのレタニアによるティエント
J.アラン
リタニー
(休憩)
グリニ
オルガン曲集第一巻より
「テノール上の第一キリエ(五声)」
「キリエの聖歌を含む五声のフーガ」
「グラン・ジュによるディアローグ」
ブスマンス
ファンファーレ 第二番(1971)
J.S.バッハ
ライプツィヒ・コラール集より「いざ来たれ、異邦人の救い主よ」
BWV661(オルガン・プレノ、ペダルに定旋律)
BWV660(バス二声と定旋律)
BWV659(二つの鍵盤とペダルで)
幻想曲とフーガ ト短調 BWV542
前半・後半で、それぞれ「バロック→現代曲→バロック」という曲順になっているのが、とてもユニークだった。フォクルール自身が「プログラムに寄せて」の中に、「前半と後半が鏡のように対照をなす構成にしました」と説明している。
確かに難解な現代曲の後にバッハが並んでも、まったく違和感がなかった。むしろ、バッハの現代性が際立ったような印象を持った。
さて、今回印象に残ったのは、ブスマンスの1971年の作品「ファンファーレ」。この曲の初演はフォクルール自身が演奏している。曲全体を通して、音符ごとに演奏する鍵盤を変えることによる、バロックの音楽にない立体的な響きが特徴。
四次元世界にほっぽり出されたような不思議な「音空間」を、言葉にするのはとても難しい。とにかく、今まで聴いたどのライブとも違った「音空間」だった。
フォクルールが鍵盤を演奏しながら、アシスタントの女性が右へ左へとストップを操作していた。二人の呼吸が合わないと、この曲はうまく演奏できないようだ。そういう点では、連弾に近いのかもしれない。
下は、フォクルール作曲の「トッカータ」の演奏。オルガンの現代曲では、このような“連弾”シーンが多いのだろうか。オルガンの世界は深いことを知った。
あとね、オルガンって演奏する場所がホールの上の方にあるので、一階の座席に座ると、斜め上を見て聴くことになるので、ちょっと首がだるくなった。