ラヴェル「前奏曲」の和声分析
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クリスマスイブの昼間は、ラヴェルの前奏曲の和声分析をばちっとやりました。
本来、アナリーゼは通勤電車の中でもできるはずなんですが、私の場合、絶対音感がないので、ピアノでコードを確かめながらじゃないと具体的にイメージができないんです。主要なコードなら、「なんとなく、こんな感じかな」って、ぼんやりと響きのイメージはできるのですが……。
それから、何度もこのブログに書いていますが、私の場合、機能和声よりもジャズやポピュラーミュージックのコード進行の方がイメージがわきやすいです。機能和声上は、Am7とDm7の役割は同じでも、何だか違うんです。あえて言うと、Am7はドロっとした血のような赤で、Dm7は鮮血っぽい赤……我ながら、怖い表現だ。
ちなみに、先日、門下のピアノの先生に尋ねてみたら、「機能和声でやる」って言ってました。でも、コード進行で書き込む方が、はるかに視認性は高いと思うのです。
ただね。24の調すべてコード進行で分析するかっていうと、これも無理。
私の場合、もともとジャズ系なので、フラット方面はレンジが広くて変イ長調(ヘ短調)くらいまで、シャープ方面はダメでニ長調(ロ短調)くらいまでしか、パッと見てドミナントとサブドミナントの区別が付きません。変ニ長調(ヘ短調)、イ長調(ロ短調)を超えると、やっぱり機能和声です。単純にスキルの問題なんですが。
これ、クラシック音楽中心の人にはわかりにくいかもしれないけど、ジャズ、ポピュラーミュージックをやっている人なら、わかってもらえるのでは? だいたい、ジャズのスタンダードって、ニ長調(ヘ短調)~変イ長調(ロ短調)で収まっているんですね。
前置きが長くなりましたが、ラヴェル「前奏曲」の和声分析。
ジャズのスタンダードナンバーっぽいな。シンプルなコード進行のアルペジオに、9thを調味料として挿入することで、微妙な“濁り”を出しております。いわゆる「テンションノート」ですね。
ジャズ好きは、左手をアルペジオじゃなくて、密集和声で弾いてみたくなるのでは。ちょっと密集和声で弾いてみましたが、これもいいかも。
この曲って、たぶんラヴェル自身、即興的に、あるいは即興性を大切にして作ったんだろうと思います。実際、d'un rytme libre(自由なリズムで)って書き込まれてあるし。
で、下の中間部、「旋法的な即興っぽい」です……あぁ、いい表現ができない。
ここは、楽譜を見ると、響きが揺れているように思えますが、和声的にはCメジャー7一発でしょう。試しに、ベースに「下一点は」をガーンと鳴らして、上の箇所を弾いてみたらカッコよく決まりました。旋法色のメロディーと相まって、何やらドビュッシーの前奏曲っぽい響きになりました。
大昔、ジャズを習ったとき、「ベースの進行さえバチっと決まれば、基本的に高いところは何をやってもOK」という先生がいました。半分正解なんでしょうね。
中間部、一見、楽譜からは伺えませんが、裏側にドーンと「Fメジャー7一発」→「Fメジャー7一発」という響きを感じることが重要と思われます。
下は、YouTubeでたまたま見かけた人の演奏。客がささやきあっているカフェで弾いても、この曲かっこいいだろうな。